WISE・WISE tools

作り手をたずねて

森を想い、暮らしの道具をつくる

「いつも森を想いながら、ものづくりをしています」
そう話すのは、森想木工舎の田澤祐介さん。神奈川県横浜市にアトリエを持ち、木の家具から小物までさまざまな暮らしの道具をつくりだします。
自然の風合いを生かし、日本の侘び寂びにも通じる静かな佇まい。 
ただそこにあるだけで、木の生きてきた時の流れを感じ、空間を豊かにしてくれる気がします。
「森想木工舎」の工房にお邪魔して、田澤さんがどのように木を扱い、ものづくりをするのか、その想いをうかがいました。

「いつも森を想いながら、ものづくりをしています」

田澤さんがどのように木を扱い、ものづくりをするのか、その想いをうかがいました。

「幼い頃から、工作やものをつくることは好きでした。ただ、最初から木工の世界に入った訳ではなくて、学生の頃は林学科で林業のことや森林のことを学び、その後は、建設コンサルタントの会社に就職して自然環境調査の仕事をしていました。
日本全国各地の山の奥に入り、ダムや道路などを開発する時に、自然にどのような影響がでるのか、調査をする仕事です。
仕事で山の奥まで入ると、自然の厳しさというか、危険というのを感じることもありました。熊に茂みの向こうから唸られたこともあります(笑)

今と全く違う仕事をしていたと驚かれるのですが、自分の中では、今のものづくりもその頃からつながっている気がします。森林や自然環境を考える、大切にするという意識の延長線上として、今は木を使って仕事をしています。

日本らしさ、というのはいつも自分の制作において大切にしています。
日本建築を見に行き、伝統的な家屋から学ぶことも多いですね。本を読んで研究して、自分で作り出すことも多いです。
日本には古くから木の文化があり、様々な種類の木があり、山の奥に入り込んでも、かつて人がそこに入っていた跡があります。暮らしの道具として木を使ってきた、人と森の長い時間がある。森を想いながら、ものづくりをすることで、生きた木のぬくもりを感じていただけたらと思います。

日本の暮らしの中で使われてきたものの懐かしさと同時に、新鮮さも感じられる。そういったものをつくっていきたいと思います」

日本の暮らしの中で使われてきたものの懐かしさ

木と向き合い、ひとつひとつ丁寧にかたちづくられる暮らしの道具。

研究を重ねてきたことを感じるメモ。

機能性に優れ、美しい仕上がりとなるようにと、研究を重ねてきたことを感じるメモ。

白漆の片口酒器とぐいのみ

佇まいの美しい背高膳

黒漆と白漆の片口酒器とぐいのみ

形をつくった後、仕上げに漆を塗る作業も田澤さん自らが行います。

仕上げに漆を塗る作業も田澤さん自らが行います。

漆を乾燥させる「室」(むろ)も田澤さんが自分の手でつくったもの。

メタリックな表情の器

金属のような不思議な風合いの器

漆の上に金属の粉を吹きつけ、メタリックな表情の器に。

人気の珈琲キャニスター

WISE・WISE toolsでも人気のコーヒーキャニスター。田澤さんの手で彫り込まれた温もりのある蓋部分と、和の佇まいを感じる珈琲杓。薄さにこだわり、繊細に形作られたフォルムが美しい作品です。

和の佇まいを感じる珈琲杓

田澤さんが近所で摘んできた野草

工房には、田澤さんが近所で摘んできた野草が飾られていました。

さりげなく飾られた草花

野に咲く草花も、少し手を加えると私たちの暮らしを豊かにしてくれる。
さりげなく飾られた草花に、田澤さんの自然と向き合いながら価値を引き出す、優しい眼差しを見るような気がしました。

文・撮影:さとう未知子

紹介アイテム

特集・読みもの 一覧