WISE・WISE tools

作り手をたずねて

毎年飾るのが愉しみになる、白木の鏡餅

白く滑らかなミズキの木肌をそのまま生かし、ろくろ挽きで仕上げた滑らかな鏡餅。
陶器製の橙、正絹の紅白組紐、会津木綿の紅白敷布をセットにした、おめでたい WISE・WISE tools 別注仕様の鏡餅には、日本各地の技術と作り手の想いが込められています。

宮城県・鳴子温泉「桜井こけし店」の手掛ける鏡餅

東北新幹線との接続駅である古川駅から「奥の細道湯けむりライン」の愛称で親しまれている2両編成の陸羽東線(りくうとうせん)に揺られ、緑が一面に広がる車窓からの景色を愉しむこと約1時間弱。鳴子温泉駅に降り立つと、鼻先にふわりと硫黄の香りが漂います。
こけし店・工房が並ぶ温泉街の中に、5代目櫻井昭寛さんと、6代目尚道さんが営む「桜井こけし店」はあります。
「桜井こけし店」は、江戸時代より伝統的な鳴子こけしを手掛けてきた歴史を持ちながらも、現代に合うデザインを提案しています。

こけしを上から見たときのデザイン

こけしを上から見たときのデザイン

こけしの頭を上から見た様子を描いたモチーフが飾られています。10軒以上あるこけし工房は、家々で受け継がれた描彩があり、それぞれデザインが異なるそうです。

たくさんのこけしが出迎えてくれる店内

こけしの絵付け体験

<店頭では、こけしの絵付け体験のワークショップも開催しています>

閑中閑本 第拾六冊 鳴子こけし帖

閑中閑本 第拾六冊 鳴子こけし帖

<こけしづくりの工程や工具を版画で描いた 前川千帆著・「閑中閑本 第拾六冊 鳴子こけし帖」>

鏡餅は、鳴子こけしの材料である「ミズキ」をろくろで挽いて制作されます

鏡餅は、鳴子こけしの材料である「ミズキ」をろくろで挽いて制作されます。
ミズキ(水木)は、春先に枝を切ると水が滴ることが名前の由来。木肌が白く綺麗で、木目が目立たないために、人形に向いているということで、こけし作りに使われてきました。この白く乾燥させることが難しいため、毎年試行錯誤しながら白さを求めて材料作業を行っているそうです。

上下のお餅が一体となっている鏡餅

<ミズキの原木>

鏡餅でも、艶のある美しい木肌をそのまま生かしています。
鏡餅の台座には、槐(エンジュ)か山桜の2種の木材が使用されています。
エンジュ:木へんに「鬼」と書く、エンジュの木は、昔から魔除け・厄除け・災難除けになる縁起の良い木とされています。そのことから「幸福」、枝の茂り方や白く美しい花を咲かせることから「上品」という花言葉が付けられています。
山桜:茶褐色の色調。緻密で艶がある肌目が上品で美しい。堅く、粘り強い材は、経年変化で更に美しくなり、存在感を増していきます。

上下のお餅が一体となっている鏡餅

上下のお餅が一体となっている鏡餅ならではの、滑らかでふっくらとした、美味しそうなフォルム。
鳴子温泉の木地師は横挽きのろくろを使う伝統があります。このような一体型のお餅は縦挽きのろくろでは少し作りづらく、ふたつのお餅が重なる絶妙なフォルムは、鳴子温泉の横挽きろくろだからこそ生み出すことができたそう。

鮮やかなオレンジ色とぴかっとした艶が目を惹く、陶器製の橙

鏡餅の橙には、何年もなった実を落とさず、新しい実をつけていくことから、「代々、家が繁栄するように」という願いが込められています。
陶器製の橙(だいだい)の制作をお願いしたのは、インテリアデザイナー・陶芸家の田中珠紀さん。
イメージをお伝えすると、なんと10種類もの試作サンプルを制作してくださいました!
形、艶、大きさ、裏面の処理……様々なパターンの中から、迷いながら1種類を選ばせていただきました。
インテリアデザイナーのご経歴を感じさせる、細やかなご提案に感激です。

10種類もの試作サンプル

葉っぱや茎のパーツを分けた丁寧な作りで、橙表面の細かい「ブツブツ」も再現してくださいました。

葉っぱや茎のパーツを分けた丁寧な作り

葉っぱや茎のパーツを分けた丁寧な作り

ぴかっと艶のある本体と、マットな葉っぱ部分の釉薬をかけ分けて仕上げた、こだわりの橙です。

ぴかっと艶のある本体と、マットな葉っぱ部分

ぴかっと艶のある本体と、マットな葉っぱ部分

おめでたい正絹の紅白京組紐

お餅に結ばれた紅白紐は、正絹の京組紐。京都宇治に本店を構える昇苑くみひもさんに、こちらの鏡餅のために特別に制作いただきました。
縁起の良い「本結び」で1点ずつ結んでいます。

京都宇治に本店を構える昇苑くみひも

京都市街から電車で30分、京阪電気鉄道宇治線終点の宇治駅の前には、清らかな宇治川が流れています。
日本三古橋の一つに数えられる、数百年の歴史を持つ木製の宇治橋や、世界遺産の平等院の近く、昇苑くみひも本店に工房が併設されています。

カシャカシャと鳴り響く機械の音

工場の中に入ると、カシャカシャと鳴り響く機械の音。
大きな声で話さないと聞き取れないほど、にぎやかな音でいっぱいでした。
創業時から使われているという数十台もの「製紐機(せいちゅうき)」と呼ばれる組紐を作る機械は、50年もの月日動き続けてきた働きものです。

動き出すと工場の中がよりにぎやかに

動き出すと工場の中がよりにぎやかに

最大で36本の糸を組み上げることができる機械もあり、動き出すと工場の中がよりにぎやかになります。

人と共に動き続け、長い間油を差しながら大切に使われてきた歴史の温かみを感じる機械

人と共に動き続け、長い間油を差しながら大切に使われてきた歴史の温かみを感じる機械

まるで鈴や楽器のような、シャンシャンともカシャカシャとも聞こえる、独特の音。
「機械組」と言っても、そこにあるのはコンピューターが制御するような冷たい無機質な機械ではなく、人と共に動き続け、長い間油を差しながら大切に使われてきた歴史の温かみを感じる機械でした。

絹糸を染める工程も

にぎやかな工場とは一転、静かで温かな加工場にもお邪魔させていただきました。

静かで温かな加工場

静かで温かな加工場

隣接の加工場では、専門技術を習得された10名ほどの女性スタッフさんが組み上がった組紐の加工を行っています。
組紐の端処理や、帯締め、アクセサリーにするための結び加工など。
慣れない人には1時間掛かってもできない加工を、熟練の手仕事でどんどん仕上げていきます。

熟練の手仕事

<蒲鉾板を再利用して制作した、様々なサイズの治具>

様々なサイズの治具

店舗の2階には伝統の手組機が置かれており、伝統工芸士の方の実演や、組紐のワークショップが開催されています。今でも、数万円の価格帯の帯締めなどが手組で制作されています。

伝統の手組機械

毎年飾るのが楽しみになる、手仕事の詰まった鏡餅

毎年飾るのが愉しみになる、手仕事の詰まった鏡餅

1年の終わりのお正月支度に、毎年箱から出して飾るのが愉しみになる、手仕事の詰まった鏡餅。
特別な季節を彩るインテリア用品です。

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