つちや まり 陶芸家
5月が近づいた緑の鮮やかな日、新店舗WISE・WISE tools 根津店と同じ文京区にお住まいのつちやまりさんのアトリエにお伺いさせていただきました。
緑溢れる中庭を囲む、ご自宅と工房。
窓から“ちょこん”と愛猫のクレイちゃんがのぞいています。
長く自然豊かな葉山で活動されていたつちやさん。
お子さんの教育環境や生活のバランスを考慮し、都内の文京区に引っ越しされました。
小さい頃は山を駆け上がって育ってきたお子さん達も、今ではマウンテンバイク制作(!)など、違う楽しみに夢中だそう。
ご縁があって受け継いだ築50年以上になるご自宅。人が住んでいない期間が数年あったため、引っ越し当初はお庭が都会のセミの羽化場になっていたという程緑豊かなお庭は、大きな杏の樹の他、ムクゲ・桜・梅・木蓮・金木犀(昔、子供が生まれた時に文京区がプレゼントしていた樹)など、たくさんの木々に恵まれています。
住居のテラスでつちやさんが大切に育てている20~30種類もの季節の花々は、器に施される印判のモチーフに。
土にスケジュールを合わせて、作陶する日々
家事と育児・仕事を両立して活動を続けていらっしゃるつちやさん。
1日作って、1日乾かし、窯を冷やす日を設けて、、土にスケジュールを合わせて、作陶する日々。7月8月は夏休みを取って、ライフワークバランスを保っています。
中庭を活用したアトリエは、リビングでお子さんが勉強している様子を見守りながら制作をしたりと、バランス良く生活リズムを保つことができる場所。
工房も部屋の中なのにまるで屋外のような、気持ちの良い風が通ります。
都内にありながら、緑が多く、時間がゆっくり流れているような静かな環境です。
ハプニングを経て復活した2代目の窯
25歳の時に開窯されて以来、ずっと使用していた窯。
実は2021年3月にWISE・WISE tools東京ミッドタウン店にて個展をお願いしていたのですが、直前になんとその窯が壊れるハプニングがあり、展示は6月に延期させていただくことになりました。
世界的にも有名だった優れた配線を持っている当時の窯屋さんが無くなってしまっていて、必死に探し、その窯屋さんから独立されていた職人さんが滋賀にいることが分かり、はるばる修理に来ていただくことが出来ました。
作風について
1枚の紙のようにした土を型にはめ、叩いて成形する“タタラづくり”に、草花の絵付けを施しているつちやさん。
独立した頃は、海の砂を混ぜた土をろくろで成形して制作をされていたのですが、“絵付けは好きだったけど、ろくろに絵付けをするのが好きではなかった”ため、1枚の紙のようにしたものであれば、絵付けがしやすいことに気付き、現在のスタイルが生まれたそう。
“綺麗でかっちりした絵付けではなく、自然体な作品や絵付けに惹かれる”というつちやさん。
最近では、ろくろに自然な絵付けが施されている作品を見て、“やってみようかな”という気持ちも沸いてきているそうです。
美しいレリーフが彫られた石膏型は、原型からご自身で制作されています。
20年近く経ってカケが出て、やがて型としては使えなくなってしまったものも、なるべく捨てずに土を再生する時に水分を吸わせる道具として再利用し、大切に使っています。
小さい頃から作ることが大好きで、葉山の海で遊んでは貝殻などを拾って持ち帰り、何かを作っていたそう。家族旅行をきっかけに、妹さん(※料理研究家のつちやゆみさん)とカナダへ留学した経験もあり、帰国後は日本の良さを感じられる京都の美術大学へ進学されました。
“日本より海外の方が合っているかも“というつちやさん。自然体のお人柄やライフスタイルが、そのまま作品に表現されています。
絵付けの制作風景を見せていただきました
つちやまりさんのアトリエをたずねて
刈り戻し、ボウルにいっぱいになったビオラ。
根元から新芽が出てくる準備
道具入れの中にはお子さんのお名前が付いた定規も
デザインの参考にもなる古い植物図鑑
リビングの花柄の壁紙はヨーロッパのメーカーのもの
“クリスマスツリーの様だった”というセミの羽化
これまでも色々な生き物と一緒に暮らして来られたつちやさん。保護猫だったクレイちゃんは可愛いやんちゃ盛り
サステナブルな暮らしに関心が高く、抜群におしゃれさんな学生時代からの友人が、1番大好きな作家さんだったことがきっかけで、お取扱いをさせていただくことが叶ったつちやまりさん。
働くお母さんの先輩、そして文京区住まいの先輩でもあるつちやさんの考え・暮らし方をお伺いする機会に恵まれ、風が通り抜けるアトリエにお邪魔させていただきました。
根津地域への愛着がより深まり、新店舗も地域から愛されるお店を目指したいと思います。
WISE・WISE tools バイヤー神口
つちや まり Mari Tsuchiya
陶芸家 / 東京都 Potter / Tokyo
高校の時に家族とともにカナダに移住。帰国し京都精華大学にて陶芸を学ぶ
横須賀市秋谷に築窯。長く葉山で活動し、1996年 東京都文京区へ移転
「道具は使うけれど機械は使わない」で成形された器は一つひとつ個性を持ち、手の温もりが表情豊かなゆがみとなって現れます。