作り手をたずねて

WISE・WISE tools オリジナル 手漉き和紙バッグ 細川紙 × 金銀砂子

伝統工芸を掛け合わせ、現代の美意識で進化させた、今までに無い和紙バッグ

プロジェクト背景

日頃より「地域に根ざした家具を作りたい」と日本各地に出掛けることが多いワイス・ワイス代表 佐藤。
行く先々で素晴らしい伝統工芸が残る地域に後継者はいなく、“息子には経営が厳しくて継がせることができない。今、息子は東京にいるんだ。”と言っている人に多く遭遇し、「このままではいけない、日本の伝統技術が途絶えてしまう。 残すべき日本の誇れる伝統工芸や文化を次世代へ、子供達に伝えていきたい。」という思いが強くなります。

世の中は価格競争に陥り、100円均一やファストなものばかりになって、子供達はモノを見る目を養う環境を与えられないのではないか・・という危機感すら感じる。
そんな想いの中で、普段からお付き合いのある取引先であり、昔ながらの製法で材料から真剣にものづくりに取り組まれている久保製紙さんご一家を応援したい気持ちから今回の商品開発は始まりました。
「普段使いできる和紙バッグを一緒に作って欲しい。」という佐藤の提案に、“ワイス・ワイスさんの頼みなら”とお話を受けていただいた久保さんご家族。伝統手漉き和紙の細川紙を扱う襖紙屋さんが同じ地域にいるということを知り、和紙バッグと金銀砂子※ を組み合わさることで、今までにない和紙バッグの製作に挑戦することになりました。

課題は山積み。
まず、和紙でどこまでの強度が出せるのか。
和紙を何枚重ねる必要があるのか。
取手は抜けないのか。
和紙として高価な細川紙をどれだけ使うのか、価格はいくらになるのか。
需要はあるのだろうか。

2つの伝統工芸のコラボレーション

小川和紙(細川紙)
金銀砂子細工

– 小川和紙(細川紙) / 久保製紙 –

秩父の山々と関東平野に根付いた人々の暮らしが交差する『武蔵の小京都・小川町』は1300年の歴史を誇る、 「細川紙(ほそかわし)」の里です。未晒しの純楮紙ならではの強靭さや、甘皮を残すことで生まれる飴色の光沢が特徴で、 昭和五十三年に国の重要無形文化財に指定され、平成26年にはユネスコ無形文化遺産の保護に関する条約に基づく 「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に「和紙:日本の手漉き和紙技術」(石州半紙・本美濃紙・細川紙)として記載されました。

こんにゃく加工・シワ揉みと成形

元々、楮のみで作られ他のパルプなどの混ぜ物がないことで、和紙の中でも強靭な細川紙ですが、「バッグ」にして日常使い・重いものも入れたいとなるとそのままでは強度が足りず・・
久保さんが提案してくださったのは、自然素材である「こんにゃく粉」を和紙に含ませることで、強度を上げるアイディア。
一度乾燥させた和紙に、刷毛でこんにゃく粉を水に溶き一晩寝かせたものを塗り込み、和紙を1枚ずつ手揉みしていきます。揉み紙になることで、後の工程の金銀砂子がより輝きを増し、きらめきます。握力が強いと縮みすぎてしまうため、力加減が難しい工程。(600×900mmサイズの紙が揉およそ2cm位縮みます)

シワ加工後、印刷と金銀砂子の加工を施し、また久保さんの元に戻ってきた柄入りの和紙を、 治具を使って、手作業で立体に成形していきます。
紋様が印刷された和紙を内袋と外袋、取手や底板のパーツを作り、治具と接着剤を使って成形していきます。治具は自宅のウッドデッキの端材で手作りしたもの。無い道具は自分で手作りします。以前ランタンを作ったときのノウハウを生かして作ったそう。

-久保製紙-細川紙のシワ加工-

kubo-seishi
久保製紙・久保さんご一家

紙漉きは5代目久保孝正さん、揉み加工は奥様、バッグ型への成形は久保さんのお母様が担当してくださっています。

– 金銀砂子 / 宮川紙工 –

金銀砂子とは、金箔や銀箔などを用いた、日本独自の襖紙装飾の技法です。 日本の美術史に残る数多くの巻物や屏風、各地の歴史的建造物の襖などにも用いられています。
七夕の歌“ささの葉さらさら のきばにゆれる お星さまきらきら きんぎんすなご”という歌詞で馴染みがありますね。歌詞では、星々が光り輝いている様子を表しています。

宮川紙工さんでは全国の老舗ホテルや旅館に納品する襖を手掛けていらっしゃいます。
今回のような「バッグ」など、普段制作されているものと異なるジャンルの制作は初めてとのこと。
普段は下請けが多く、小川町でも知らない方も多いのだとか。久保製紙・久保孝正さんが地域の商工会・青年部で知り合い、今回の新しい取り組みにも積極的に挑戦してくださいました。
揉んだ和紙に印刷するのは初めての試み。柄が綺麗に出る塗料を手作業で配合して作り、印刷時の力加減の調整を重ねました。印刷した塗料が乾かないうちに、通常のおよそ2倍の量の砂子を振りかけていきます。(砂子が飛んでしまうため空調を切らねばならず、夏場は暑いのです・・)
仕上げに砂子を定着させ、バッグとして使用する際なるべく砂子が落ちないように、クリア塗装を施します。

バッグに採用させて頂いた図柄は現在も宮内庁などで採用されている伝統ある「有職文様(ゆうそくもんよう)」の1つである「立涌文様(たてわくもんよう)」にアレンジを加えたオリジナル柄です。

【立涌文様】
立涌文様は、立枠(たちわき)文ともいわれ、波状の2本の曲線を用い雲気、水蒸気が涌き立ちのぼっていく様子をあらわしている、有職文様のひとつです。
曲線のふくらんだところに文様を入れて、雲立涌、波立涌、藤立涌、菊立涌、松立涌と立涌の中にもさまざまな変化形があります。歴史上の屏風や正倉院宝物、能の装束などにも立涌文様が用いられています。

【有職文様】
平安時代以来、公家の装束・調度などに用いられた伝統的な文様。 正六角形の幾何学文様で亀の甲に似ていることからつけられた亀甲文、二羽の蝶を向かい合わせて、丸や菱形の中に配置した向蝶文のほか、石畳文、窠文、七宝文、菱文、丸文などが代表的です。

miyagawa-shikou
宮川紙工

左:3代目の専務 宮川寛司さん、右:2代目社長 江戸からかみの伝統工芸師、宮川健一さん。
創業は専務のおじい様、砂子師や日本画家の助手をしていたそう。戦後、高田馬場・小平・所沢を転々とし、昭和40年代に小川町の地にたどり着く。

– デザイン監修 / 粟辻デザイン –

「伝統工芸を現代の美意識で進化させる」為のデザイン監修を、tools店のショッパーデザインを担当してくださっている粟辻デザインさんにお願いし、お仕事でも使えるトートタイプと、おでかけ用の手持ちバッグをご用意しました。

紙の面白さを表現する、2つの異なるデザイン

手持ちバッグのデザインは使いやすさをベースに和紙らしさの感じられる丸みのあるデザイン。揉み和紙に伝統的な立涌文様(たてわくもん)を使い、内側は無地の揉み和紙・外側は底板・取手まで贅沢に総柄を採用しました。
角度によって銀白が色味を変化させ、和装にも良く合います。

縦長トートバッグはカジュアルに持てる肩掛けタイプで、仕事にも使えるようA4の書類が入ることにこだわりました。女性をターゲットとしていますが、男性でも持つことのできるユニセックスの雰囲気。
手持ちタイプとは対照的に取手は無地、本体の外袋上部も細く無地部分を残したデザインを採用。モダンな雰囲気を演出しています。

粟辻デザイン
AWATSUJI design

商品パッケージから企業ロゴまで幅広いグラフィックデザインを手掛けられているデザイン事務所。姉妹で運営されており、今回はお姉さんの美早さんに担当頂きました。

和紙バッグが生まれるまで


紙漉き

01 紙漉き
貴重な国産原料の楮で作る、
こだわりの細川紙を
手漉きします。


こんにゃく粉加工

02 こんにゃく粉加工
一度乾燥させた和紙に、
強度を増すためこんにゃく粉を
塗り込みます。


和紙揉み

03 和紙揉み
こんにゃく粉を含ませた
和紙を手で揉み、表情を
付けていきます。


スクリーン印刷

04 スクリーン印刷
シワ加工を施した和紙に、
紋様を印刷します。


金銀砂子加工

05 金銀砂子加工①
インクが乾かないうちに、
金銀砂子を振り掛けて
いきます。


金銀砂子加工

06 金銀砂子加工②
均一に砂子がついているか
確認し、余分な砂子を
落とします。


成形

07 成形
紋様が印刷された和紙を、
治具と接着剤を使って手で
成形していきます。


デザインデータ制作

08 デザインデータ制作
サンプルの仕上がりを
見ながら、デザインを
設定していきます。


完成!

09 完成!
伝統工芸と現代の美意識が
融合した和紙バッグが
生まれました。

TV番組をきっかけに急ピッチで進んだこの企画。
佐藤のイメージを1つ1つ形にしてくださった久保さんご家族・宮川専務・粟辻デザインさん。はっと驚くような知恵と技術、伝統の素材を生かしたデザインを提供してくださったおかげで、こんなに素敵なバッグに仕上がりました。
仕上がりを見たときは職場に歓声があがりました。
伝統というと守るイメージが強かったのですが、現存するものは先人たちの新たな発想や要望を受けて革新を重ねていった結果なのではないかと感じます。
日本にはまだ知らない、手仕事や技術があるのではないか。これからの出会いと可能性が感じられ今後ますます、楽しみになりました。
是非、店頭で手にとって細部までご覧ください!
WISE・WISE tools 上田
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